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オリンピックと水球

 久しぶりに海外の水球専門サイト「Water Polo Legend」を見ていたら、懐かしい映像を見つけた。それは1964年の東京オリンピックにおける水球の決勝ラウンド「ハンガリー vs ソ連」戦の映像だった。


当時僕は大学生で、会場となった代々木オリンピックプールで補助役員をやっていたのでプールサイドで観戦した。事実上の決勝戦となったこの試合は、ハンガリーが5対2でソ連を破って優勝を決めた。
 この試合に出場したハンガリー水球チームの選手は次のとおり。

アムブルッシュ(31)
ボドナール(22)
ボロシュ(35)
ドモトル(29)
フェルカイ(23)
ジャルマティ(36)
カニジャ(31)
カルパティ(29)
コンラード(23)
マイエル(30)
ポ-チク(24)
ルショラ-ン(24)

 ベテランが多いが、実はこのうち、ボロシュ、ジャルマティ、カニジャ、カルパティ、マイエルの5名は前々回のメルボルン大会(1956)にも出場している。
 メルボルン大会の水球と言えば「あ、あれか!」と思い出す方もおられると思うが、ハンガリー動乱の直後に行われた大会である。ハンガリー動乱とはハンガリー国民による反ソ暴動がソ連軍の軍事介入で鎮圧され、多くの人命が失われた事件のことだ。その遺恨を残したままメルボルンでハンガリーとソ連の両チームが激突、流血の試合となったがハンガリーが4対0で勝利した。この時の、ハンガリーのザ-ドル選手の流血した写真は世界中を駆け巡った。
 あれから66年、今またロシアはウクライナの国民を蹂躙している。共産主義であろうとなかろうとこの国の本質は変わらないのだろう。



# by swpc | 2022-06-16 13:37

西田君の訃報

 昨夜、後輩西田君の訃報が届いた。病を得て長く、最近状態があまりよくないことは聞いていた。5級下なのでまだ70まえ。この長寿時代には早過ぎた感は否めない。
 彼は僕などは及びもつかない一流の水球選手だった。彼との思い出で忘れられないのは、彼が高校3年の時、済々黌水球部が長年続けていたインターハイの全国大会出場を逃した時のことだ。その前年はインターハイで優勝したが、3年生がごっそり卒業し、春先はさすがにチーム力が落ちていた。しかし、夏頃になると前年とは違うチームの形が整いつつあった。その軸となっていたのがフォワードの西田君と同級生のバックス宮田君だった。当然、全国大会には行けるものと思っていた。ところが九州大会で3位以内に入れず、全国大会の出場権を逃したのである。彼らのショックは大きかった。それから、残るもう一つの目標、国体へ向けて猛練習を再開した。西田君を始め、メンバーの目の色があきらかに変わっていた。連日、激しい練習が重ねられた。合宿も行い、チームは見違えるほど強化されていった。それでもチーム浮沈のカギを握っているのは西田君だった。彼には試合によって出来不出来の差が大きいという難点があった。そこで国体に向けた試合形式の練習では、彼のマンマークに、必ず僕が付くよう
コーチから指名された。その頃、僕は大学を出て熊本に帰ったばかりで、仕事の合間に暇さえあれば泳いでいたので、幸いまだ大学の現役時代と変わらない体力を有していた。しかし、夏休みが終わりに近づき、国体が迫って来た頃、彼の体力とスキルの上達は目ざましく、僕は対応しきれなくなっていた。国体では優勝もありうると確信したのはその頃である。そして、前年のインターハイ優勝の地と同じ福井で済々黌は優勝した。
 高校卒業後、彼は早稲田大学に進み、そこでも活躍した。日本代表にも選ばれたが、日本水球がアジアの中で低迷する時期だったこともあり、オリンピックに出場することはかなわなかった。
 今日、お通夜でお棺の中に眠る彼の顔を見ながら、「僕も後に続くまで大して時間はかからんよ」と、いつも友人を見送る時と同じ言葉をつぶやいた。(2019.7.4)
西田君の訃報_d0251172_10380604.jpg

# by swpc | 2019-07-06 10:40

田畑政治さんのこと

 大河ドラマ「いだてん」のもう一人の主役が阿部サダヲ演じる田畑政治さん。ドラマの後半で1964年の東京オリンピック招致に奔走する姿が描かれることでしょう。
 田畑さんにまつわる逸話を、ローマと東京の2大会に出場した藤本重信さんにお聞きしました。

 国家プロジェクトとして膨大な国家予算を費やした東京五輪が終わり、次のメキシコ五輪は一転、緊縮ムードとなった。派遣選手は東京五輪の半減。上位入賞が望めない種目は派遣が見送られた。水球も東京大会で予選リーグで敗退していたため、いったんは派遣種目から外された。しかし、かつて日本水泳連盟会長を務めていた田畑さんは当時、日本体育協会の一理事に過ぎなかったが、隠然たる力を発揮、「アジア大会で優勝した日本がオリンピックに出場しないのは、他のアジア諸国に対して失礼にあたる」と主張、水球のメキシコ五輪出場が逆転決定した。しかし、11名の選手エントリー枠に対し、2名減らして9名でエントリー。コーチ1名も水連の随行員ということで出場することになった。その結果、日本チームは予選リーグで3勝をあげ、記念すべき五輪初の勝利を記録した。水球関係者にとって恩人の一人でもある。

 このメキシコ大会に出場した日本チームには済々黌OBが4人含まれています。
コーチ 菅原平(S27卒)
選 手 米原邦夫(S35卒)、桑山博克(S37卒)、坂本征也(S38卒)
田畑政治さんのこと_d0251172_11341147.jpg
(朝日新聞より)

# by swpc | 2019-05-02 11:53

挑戦者たち

 2020年の東京オリンピックを見据え、世界にチャレンジする日本人アスリートたちにスポットを当てるドキュメント「挑戦者たち」(NHK総合)。先週、水球王国といわれるハンガリーで武者修行を続ける志水祐介選手(熊本出身)を取り上げていた。日本代表ではエース的な存在の彼も、世界トップレベルのハンガリーリーグではなかなか思うようなプレーができない様子が見てとれた。
 見ながらふと、今から56年前の昭和36年、3年後の東京オリンピックを控えて放送されたあるテレビ番組を思い出した。それは3年後に東京にやって来るであろうハンガリー水球の強さの秘密を探るような内容だった。まず日本の4分の1ほどの面積に温泉が豊富で、街には温水プールがあちこちにあり、幼い頃から水球に親しむ施設が整っていること。それらの施設を拠点としたクラブが競い合うリーグ戦が盛んで、国民の人気も高く、ハンガリーではサッカーと並ぶ国技のような存在であること。凡そそんな内容だったと記憶している。
 その番組を見た当時、僕は既に高校で水球を始めていたので、ものすごく羨ましいと同時にハンガリーに憧れたものだ。そして3年後の東京オリンピックでは、大会前の練習から試合までハンガリーチームをべったりマークして観察したことを思い出す。
 今また、3年後に東京オリンピックがやって来る。56年経った今も彼我の差はまったく縮まっていない。いやむしろ広がっている。嗚呼・・・
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# by swpc | 2018-06-09 09:33

敬愛する先輩の訃報

 先週、桑山博克さんの訃報を平田君の知らせで知った。桑山さんは高校の2級上の先輩で、済々黌水球部の黄金時代を支えた名選手だった。日大に進学後もすぐに頭角を現した。高校時代は中盤の選手だったが、大学からはその闘志とスピードを活かして、攻撃的なディフェンダーとなった。メキシコ五輪とミュンヘン五輪の2回、水球日本代表にもなった。特にメキシコでは日本水球史上初の予選リーグで3勝をあげる立役者となった。
 練習ではとにかく厳しかった。僕ら下級生は皆ピリピリしていた。しかし、なぜか僕はこの人からやさしい言葉をかけてもらった記憶しかない。大学は違ったので試合の時などに会うといつも声をかけてくれた。この人が自陣から敵のゴールをめがけてドライブをかける時のスピードは天下一品で、僕はこのプレーを見るのがいつも楽しみだった。大学を卒業して航空会社に就職された後も、自分の出身大学でもないのに僕らのチームの練習を何度も見に来ていただいた。
 桑山さん、本当にお世話になりました。来世でまた酒でも酌み交わしましょう! 合掌
柴田範房
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メキシコ五輪に出場した熊本県出身の選手・監督・コーチたち
左から競泳の大沢君、水球の米原さん、坂本さん、桑山さん、競泳の合志さん、
藤井さん、カヌーの吉野さん、ボクシングの永松さん、カヌーの白取さん

# by swpc | 2017-10-23 22:05

ヘッダー写真:昭和36年、インターハイで二連覇し凱旋した熊本駅ホームで歓迎を受ける済々黌チーム


by swpc

Note

濟々黌水球部の歴史は戦後復興の始まりとともにスタートしました。以来今日まで65年、苦難と栄光の歴史をあらためて振り返り、未来への道標とすべく、このブログを開設いたしました。必ずしも時系列ではありませんが、少しずつエピソードをご紹介していきたいと思っています。また、OBその他関係者の皆様から「想い出話」の投稿をお待ちしています。また、お手持ちの写真がありましたら、ぜひご貸与ください。
平成23年8月
    柴田範房(昭和39年卒)
連絡先:
ugg99537@nifty.com

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