オリンピックの華 - ミュンヘン大会(1972) -
▽荒瀬徹
(監督)菊池市出田出身。濟々黌、日大卒。海上自衛隊東京業務隊三佐(旧姓田久保)、36歳
▽桑山博克
(主将)熊本市千葉城町出身。濟々黌、日大卒。全日空勤務、30歳
▽木村隆
(選手)熊本市保田窪本町出身。濟々黌、日大卒。22歳
水球に肥後っ子トリオ三人が出場する。監督の荒瀬、選手の桑山(主将)木村。いずれも濟々黌-日大と水球の名門校を出た俊英。過去、濟々黌-日大が送ったオリンピック選手は、ローマ大会で宮村元信、柴田徹、藤本重信、東京大会で藤本重信、メキシコ大会で菅原平(監督)、米原邦夫、坂本征也、桑山博克。実に延べ11人にも上る。日本水球界に輝かしい伝統を築く。
監督荒瀬は自衛官。昔の位で言えば少佐である。8年間体育教官を務め、この4月から東京教育大で研修、将来は自衛隊の体育を背負って立つ男と期待されている。「先輩の菅原さんが、それまでオリンピック0勝から、メキシコで一気に3勝、12位に入ったので、私はそれを上回る8-10位をネラウ」と言う。昨年の第6回アジア大会後、全日本チームを菅原から引き継いだ荒瀬には自信がみなぎっている。「菅原は理論タイプ、荒瀬はファイトマン。はだ合いは違うが、全日本の監督としてはどちらも一流。ただ菅原は東京で徹底的に仕込まれた選手をそのままメキシコで使っておればよかったが、今回の選手の中にはまだ未熟な者が多い。そこを荒瀬がどう鍛え、どう使うか興味深い」―恩師の平田忠彦県水協理事長は二人を比較する。
腰から逆三角形に盛り上がった分厚い胸、五分刈りの髪。物腰は柔らかいが「なかなか練習は厳しい」と選手の荒瀬評だ。26年のインターハイで先輩の菅原らとともに、濟々黌水球チームを初めて全国制覇に導き、さらに28年のインターハイでも強烈なシュートを決め二度目の優勝をもたらした荒瀬。日大主将を務め、アジア大会、ユニバーシアードと華やかな競技歴を誇る。昨年まで日大桜泳会のメンバーとして現役生括は20年。チームを預かるのは初めてでやや不安は残るが、「荒瀬なら―」と水球関係者は信頼しきっている。
この荒瀬を助けるのが桑山だ。メキシコに続いてのオリンピック出場。最年長で今回は主将を命ぜられた。荒瀬とのイキもピッタリ。「水球は一度プールに入ったら試合が終わるまで上がれない。一人の選手の調子いかんがチーム全体を左右する。水球がよりチームプレーを求められるのもそのため。チームプレーこそ最大の攻撃であり防御である」―主将らしくチーム全体を見回す余裕がうかがえる。
若いころのように、アシカを思わせる出足のいい泳ぎはやや影を潜めたが、すぐれたテクニックと駆け引きには、みがきがかかった。荒瀬監督も「メキシコより平均身長が上回り、選手が大型化したものの外国勢に比べたらまだ20センチ以上も開きがある。体力は比較にならないが、桑山の円熟した技術は大いに発揮してもらわねば」と期待する。二度のオリンピックのほかジャカルタ、バンコクの両アジア大会、ブラジル、ブダペスト、東京のユニバーシアード、メキシコ・プレ五輪と国際試合も豊富。
木村も濟々黌時代、主将としてインターハイ優勝を経験しているが、日大に進んでからは不思議と海外試合のチャンスがなかった。今春日大を卒業、BSタイヤ大分に就職が決まったが「大分では水球は出来ない」とあっさり就職をけり、ミュンヘン代表を目指して、日大合宿入りした。
六月に盲腸炎を起こし、7月末の選考会では大きなミスが続出した。このため選考委員会では木村一人を巡って論議が交わされた。しかも海外遠征の経験もない。委員の採決では4-4となったが、結局、荒瀬監督の判断で木村に決定したという。やはり“若い”ということがキメ手になったようだ。175センチ、68キロ上背のわりには体重がない。メンバーでも一番軽量だ。性格的にもやや弱い。このため荒瀬監督もビシビシと鍛え、グンと力強さを増している。

平田先生を囲んだミュンヘン五輪出場の熊本県出身選手
後列左から荒瀬徹水球監督と木村隆、桑山博克(右上枠内)
前列左から青木まゆみ、松村鈴子、合志えい子の各選手
(監督)菊池市出田出身。濟々黌、日大卒。海上自衛隊東京業務隊三佐(旧姓田久保)、36歳
▽桑山博克
(主将)熊本市千葉城町出身。濟々黌、日大卒。全日空勤務、30歳
▽木村隆
(選手)熊本市保田窪本町出身。濟々黌、日大卒。22歳
水球に肥後っ子トリオ三人が出場する。監督の荒瀬、選手の桑山(主将)木村。いずれも濟々黌-日大と水球の名門校を出た俊英。過去、濟々黌-日大が送ったオリンピック選手は、ローマ大会で宮村元信、柴田徹、藤本重信、東京大会で藤本重信、メキシコ大会で菅原平(監督)、米原邦夫、坂本征也、桑山博克。実に延べ11人にも上る。日本水球界に輝かしい伝統を築く。
監督荒瀬は自衛官。昔の位で言えば少佐である。8年間体育教官を務め、この4月から東京教育大で研修、将来は自衛隊の体育を背負って立つ男と期待されている。「先輩の菅原さんが、それまでオリンピック0勝から、メキシコで一気に3勝、12位に入ったので、私はそれを上回る8-10位をネラウ」と言う。昨年の第6回アジア大会後、全日本チームを菅原から引き継いだ荒瀬には自信がみなぎっている。「菅原は理論タイプ、荒瀬はファイトマン。はだ合いは違うが、全日本の監督としてはどちらも一流。ただ菅原は東京で徹底的に仕込まれた選手をそのままメキシコで使っておればよかったが、今回の選手の中にはまだ未熟な者が多い。そこを荒瀬がどう鍛え、どう使うか興味深い」―恩師の平田忠彦県水協理事長は二人を比較する。
腰から逆三角形に盛り上がった分厚い胸、五分刈りの髪。物腰は柔らかいが「なかなか練習は厳しい」と選手の荒瀬評だ。26年のインターハイで先輩の菅原らとともに、濟々黌水球チームを初めて全国制覇に導き、さらに28年のインターハイでも強烈なシュートを決め二度目の優勝をもたらした荒瀬。日大主将を務め、アジア大会、ユニバーシアードと華やかな競技歴を誇る。昨年まで日大桜泳会のメンバーとして現役生括は20年。チームを預かるのは初めてでやや不安は残るが、「荒瀬なら―」と水球関係者は信頼しきっている。
この荒瀬を助けるのが桑山だ。メキシコに続いてのオリンピック出場。最年長で今回は主将を命ぜられた。荒瀬とのイキもピッタリ。「水球は一度プールに入ったら試合が終わるまで上がれない。一人の選手の調子いかんがチーム全体を左右する。水球がよりチームプレーを求められるのもそのため。チームプレーこそ最大の攻撃であり防御である」―主将らしくチーム全体を見回す余裕がうかがえる。
若いころのように、アシカを思わせる出足のいい泳ぎはやや影を潜めたが、すぐれたテクニックと駆け引きには、みがきがかかった。荒瀬監督も「メキシコより平均身長が上回り、選手が大型化したものの外国勢に比べたらまだ20センチ以上も開きがある。体力は比較にならないが、桑山の円熟した技術は大いに発揮してもらわねば」と期待する。二度のオリンピックのほかジャカルタ、バンコクの両アジア大会、ブラジル、ブダペスト、東京のユニバーシアード、メキシコ・プレ五輪と国際試合も豊富。
木村も濟々黌時代、主将としてインターハイ優勝を経験しているが、日大に進んでからは不思議と海外試合のチャンスがなかった。今春日大を卒業、BSタイヤ大分に就職が決まったが「大分では水球は出来ない」とあっさり就職をけり、ミュンヘン代表を目指して、日大合宿入りした。
六月に盲腸炎を起こし、7月末の選考会では大きなミスが続出した。このため選考委員会では木村一人を巡って論議が交わされた。しかも海外遠征の経験もない。委員の採決では4-4となったが、結局、荒瀬監督の判断で木村に決定したという。やはり“若い”ということがキメ手になったようだ。175センチ、68キロ上背のわりには体重がない。メンバーでも一番軽量だ。性格的にもやや弱い。このため荒瀬監督もビシビシと鍛え、グンと力強さを増している。
(昭和47年8月20日熊本日日新聞)

平田先生を囲んだミュンヘン五輪出場の熊本県出身選手
後列左から荒瀬徹水球監督と木村隆、桑山博克(右上枠内)
前列左から青木まゆみ、松村鈴子、合志えい子の各選手
by swpc
| 2012-03-29 15:31

ヘッダー写真:昭和36年、インターハイで二連覇し凱旋した熊本駅ホームで歓迎を受ける済々黌チーム
by swpc
Note
濟々黌水球部の歴史は戦後復興の始まりとともにスタートしました。以来今日まで65年、苦難と栄光の歴史をあらためて振り返り、未来への道標とすべく、このブログを開設いたしました。必ずしも時系列ではありませんが、少しずつエピソードをご紹介していきたいと思っています。また、OBその他関係者の皆様から「想い出話」の投稿をお待ちしています。また、お手持ちの写真がありましたら、ぜひご貸与ください。
平成23年8月
柴田範房(昭和39年卒)
連絡先:
ugg99537@nifty.com
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連絡先:
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